こんにちは
小川糸さんの本をレビューするのは初めてですが、2−3年前に読んだ『食堂かたつむり』を再読したのでブログします。
食堂かたつむりのあらすじ
田舎から15歳で上京して10年、その間一度も帰郷したことのなかった倫子は、インド人の恋人に逃げられて失意のどん底に。
声まで出なくなってしまった。
泣く泣く田舎に帰郷します。
倫子は苦手な母瑠璃子に頼み込んで食堂を開くことを決意。
1日に1組だけのお客様をもてなす「食堂かたつむり」をオープンします。
決まったメニューがなく当日何を出すかお客と相談して決めるという変わった食堂かたつむりに、色んなお客が訪れます。
なぜか、『倫子の料理を食べると幸せになる』と言う評判が広がり、食堂かたつむりは順調に滑り出す。
ある日母瑠璃子から末期のガンにかかっていると告白されます。
自分の高校時代の初恋相手・修一が自分の病気を見てくれている主治医であり、瑠璃子は彼と結婚することを決めます。
ツバキ文具店と似ている設定
レビューはしてませんが、他にツバキ文具店を何年か前に読んでます。
ツバキ文具店は、素朴な若い女性が、文具店を引き継ぐことになり、代書屋として生きてゆく話。
手紙を通じて人と交流するお話でしたが、今回はやっぱり素朴な若い女性が料理を通じて人と交流し、人生を取り戻すお話。
瑠璃子からの手紙
残念ながら、瑠璃子は修一と結婚後に亡くなってしまいます。
倫子は流石に落ち込み、食堂も再開できないでいた。
そんなとき、母親からの手紙を発見する。
そこが、この小説のクライマックス
それにしても、いつから私達って、こんなふうになってしまったのかしら?
一度からまった糸って、なかなかほどけないものね。 私はあなたのことが大好きなのに、どうしてもそれをきちんと伝えることができなかった。心のどこかで、自分の一番愛する人の子どもじゃない、っていう思いが あったのかもしれない。 ごめんなさいね。本当にごめんなさい。
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すぐに食堂を再開しなさい
あなたには、才能がある。
あなたは料理を作ることで、誰かを幸せにすることができる。
アタシにはない、せっかくの才能なんだから、一時も惜しんで経験を積みなさい。
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もっと胸を張って、堂々と生きなさい。
食堂かたつむり
生きているうちに、きちんと思いを伝えられたら良かったのでしょうが、人はそんなに単純にはできてない。
まとめ
倫子は、最終的に才能のある料理でひとを幸せにする道を得ることができた。
母親の本当の気持ちは、生前に知ることはできなかったが、今後前向きに生きて行ける展開で小説は終わっている。
あなたには料理の才能がある。それで人を幸せにしなさいと、明確に教えられたのは倫子にとって大きかった。
挫折した、素朴な女性が、人生を取り戻す作品で、勇気を与えられた。