小説

村上龍の『55歳からのハローライフ』

ずっと、気になってました。

『ハローワーク』と思ってましたが、ハローライフでした。

55歳前後の人生の曲がり角に差し掛かった人の、5つの物語集です。

55歳というと、それまでの人生でさまざまな困難を抱えています。

経済状態、家族関係、健康状態などもさまざまです。

同世代の人たちの物語で、興味深く読みましたので、ブログします。

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結婚相談所

54歳で離婚した志津子の話。

きっかけは、生真面目な夫が退職後の再就職に失敗して、家に居る様になったこと。

夫はテレビの前から動かず、会話も無し。

離婚を切り出しても、『勝手にしろ』と言うのみ。

離婚後、結婚相談所に通い1年間に14回の見合いを繰り返すが、うまくゆかない。

時には泣きたくなる様な経験もするし、プロポーズを受けるも、迷った挙句に断るといった経験もする。

そうした経験を通して、志津子は自分が何を望んでいるかについて考える様になる。

自分と向きあう様になったとも言える。

欲しいことが、ぼんやりとわかってきた。それは、変化すると言うことだった。この歳になって、金持ちになれるわけでも無いし、新しい才能が芽生えるわけでも無い。また、整形手術をして、顔や身体を変えたいわけでも無い。ただ、何かしらの変化が欲しい。

今までの自分とは違う自分を確かめてみたい。

55歳からのハローライフ

志津子の決断

見合いを繰り返しながらも、夫から会いたいとの連絡を受ける。

断り続けていたが、最後に会うことになる。

夫は、自分は変わったとのアピール。

地域の集まりや、ボランティアにも参加する様になった。

皆んなから、変わったと言われているとのこと。

夫は『やり直したい』と言う。

変化を求めるのであれば、再婚もうまくゆかず、健康、お金など不安だらけの老後を考えたらやり直すことも考えられる。

そこで、志津子の下した決断とは。。。

是非お読みください。

空を飛ぶ夢をもう一度

これも、54歳で出版社をリストラされた因藤茂雄の話。

腰痛を抱え、再就職もままならず、交通整備などの仕事でなんとか食い繋いでいる。

『人は、案外簡単にホームレスに転落する』

という言葉で始まるこの物語に、私は一番感動しました。

交通整備の仕事中、ふとしたことで中学時代の同級生の福田貞夫と再会する。

この貞夫は、父親と不仲で勘当状態、職を転々としたが、実は現在はホームレス状態であった。

貞夫は重病を患っており、長く会っていない母親に、あるものを渡して欲しいと、茂雄に頼む。

茂雄はどうするか?

ホームレス状態になってしまった貞夫にたいする茂雄の視線の優しさに感動させられました。

自身も、さまざまな困難を抱え、なんとか踏みとどまっている状態であったことから、貞夫を理解できたのだと思います。

最後の部分の茂雄の言葉が印象的でした

実は俺の方も、不安だらけで、正直生きるのが苦しい。

しかし、少なくとも家族がいて、まだ生きている。そして生きてさえいれば、またいつか、空を飛ぶ夢をみられるかも知れない。福田、救われたのは俺の方だよ

55歳からのハローライフ
haro-raihu murakami

キャンピングカー

これは、少し経済的に余裕のある58歳元営業職、富裕の話

早期退職に応じた、富裕は、退職後は気が向いた時にキャンピングカーで妻とアチコチ旅をしたいと考えていた。

経済的にはどうにかなると考えていたが、妻や子供たちの反応は冷ややか。

結局は再就職を考える様になるが、うまくゆかない。

そうするうちに、精神的にも不安定になってゆく。

といった内容。

妻には妻の時間があり、やりたいことも有るということ。

会社人間から、新しい家庭や地域での関係を築くのは難しくて、決して自分の思った通りには事は運ばない。

後半で、富裕がかかった心療内科医の言葉が印象的でした。

別にこれまでと違うことをする必要はないんです。関係は自然に築かれ、次第に不安感は薄くなってきます

55歳からのハローライフ

ペットロス

高巻淑子は53歳のとき、息子が転勤で海外に出たことを機に、犬を飼うことを夫に認めさせた。

夫は定年退職後は、家ではパソコン、テレビに向かうばかりであまり淑子に向き合わない。

愛犬(ボビー)を得てから淑子の生活は一変。

多くのペット繋がりの知り合いもできた。

特に妻に先立たれた初老のヨシダさんと時々話すことが、楽しみにもなってきた。

生活に張りも出てきたが、ボビーの調子が悪くなる。

病気が徐々に悪化し、とうとう亡くなってしまう。

その間、それまで素っ気なく、無関心と思っていた夫が、実はかなり心配していたことに気づいた。

夫の新しい一面を発見、新しい関係性が築ける兆しが見えてきた。

トラベルヘルパー

60歳で運送会社を辞めた、63歳の元トラック運転手の話。

若い時は羽振りが良かった。

よくあそび、女性にもモテた。

しかし結局結婚はすることなく、還暦をすぎて独身。

自分には何も残ってないことを身に沁みる。

退職してからは、宅急便のバイトなどで慎ましく生活。

遊びも、もっぱら読書。これならお金もかからず、時間も潰せる。

あるとき、古本屋で気になる女性にであい、2人で時々会う仲に発展。

しかし、その女性は色々訳ありで という内容。

結局、その女性のことは諦めるが、彼女との出会いがきっかけで、新たな生きがいを見出してゆくという内容。

5つの物語を読んで

主人公の状況はさまざまで、あったが皆んな将来に不安を抱えなんとか生きている。

打ちひしがれることもあるが、折り合いをつけてなんとか前を向いて生きてゆく姿に勇気づけられる内容。

どの物語を読んでも、理想通りには行かないが、自分なりの光は見つけられるのでは無いとか感じさせて貰えました。

特に、同世代の方にお薦めです。

  • この記事を書いた人

bouzu-masa

50代 性格は内向的ですが、なんとかこの歳までサラリーマン生活を続けてます。経験をふまえて、同じ性格に悩む方に役立つ情報を発信します。趣味:読書、walking

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